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スマホアプリが虎ノ門をARの実験場に変える?
「TOKYO NODE Xplorer」の野望

2023.10.6 (Fri)

TEXT BY SHUNTA ISHIGAMI
PHOTO BY SHINTARO YOSHIMATSU

「TOKYO NODE」の開業とともに「TOKYO NODE Xplorer」なるアプリがリリースされた。デジタルツインを活用したさまざまなARコンテンツを提供するこのアプリは、リアルとデジタルを融合させながらTOKYO NODEから生まれた表現を虎ノ門の街へ広げていくものでもある。展示企画のプロモーションを筆頭に館内ナビゲーションやARストリートライブなど、多様なコンテンツの発表が予定されているこのアプリは、どこに向かおうとしているのか。企画・開発を行ったバスキュールの桟義雄と大澤咲子へのインタビューから、その野望を明らかにする。

虎ノ門をデジタルツインへ変えるアプリ

「TOKYO NODE」は、ただ展示やイベントを行うだけの施設ではない。「TOKYO NODE LAB」のような実験的施設が新たな表現へ挑戦する機会を提供することはもちろんのこと、虎ノ門をデジタルツインの街へ変えることもTOKYO NODEのテーマのひとつだ。

それも、シミュレーションのために現実の建物や道をデジタル空間上に再現するただのデジタルツインではない。TOKYO NODEは、デジタル空間上の活動が現実にも影響を及ぼす「ダイナミックデジタルツイン」へ虎ノ門の街を変えようとしている。デジタル空間上で展開される表現が実際の街の体験を変えていくとしたら、居住者やオフィスの利用者に限らず多くの人がまちづくりに関われるようになるだろう。虎ノ門は時間と空間から解放された、開かれたプロトタイピングの場になっていくのである。

ダイナミックデジタルツインのようにリアルとデジタルをつなげるような取り組みにおいてかかせない存在が、開業と合わせてリリースされた「TOKYO NODE Xplorer」だ。ラボメンバーでもあるバスキュールによる企画・開発のもと制作が進んだこのアプリは、ARコンテンツの発表を筆頭に、TOKYO NODEを訪れた人々に新たな体験を提供しようとしている。

アプリを立ち上げTOKYO NODEから外に向かってカメラをかざすと、ビルの壁面から開幕展「Syn:身体感覚の新たな地平」に登場するダンサーが現れる(画像は検証中の様子)。

このアプリの特徴は、虎ノ門ヒルズステーションタワーやビル周辺の環境と連動したARコンテンツを提供していることにある。たとえば開業時においては、虎ノ門ヒルズ駅から虎ノ門ヒルズステーションタワーにつながる地下駅前広場と、周辺4つのビル側面、そして8Fに設けられたテラスの3カ所を対象として、ここでしか体験できないARコンテンツを提供する予定だ。

「もちろん街をフィールドにしたARコンテンツはすでに多く発表されていますし、観光地のモニュメントなど特定の場所を対象にしたコンテンツも少なくありません。しかし、森ビルのようなデベロッパーが中心となってデジタルツインやAR表現の場を開拓することは珍しいんじゃないでしょうか」

バスキュールのクリエイティブエンジニア、桟義雄はそう語る。VR/AR技術のプラットフォーマーではなくTOKYO NODEという場が積極的に企画や開発に参加しているからこそ、ここでしか得られない体験を継続的に生み出せるのだろう。では、具体的にはどんなコンテンツが提供されるのだろうか。

開業時に予定されているのは、開館記念企画 第一弾を飾る「Syn : 身体感覚の新たな地平」by Rhizomatiks × ELEVENPLAYと連動した企画だ。アプリを起動し、館内あるいはビル周辺の特定のスポットへカメラをかざすと、3D化されたELEVENPLAYのダンサーが現れて目の前の風景と重なるように踊りだすこともあれば、ビル壁面が巨大なポスターで覆われ、虎ノ門ヒルズステーションタワーが「Syn : 身体感覚の新たな地平」の世界へと一変することもある。

さらに今後は虎ノ門ヒルズ駅チカからTOKYO NODEやラボへの移動を案内する3Dインターフェイスナビゲーションの導入や、カフェなどで配られたコースターにカメラをかざすことで体験できるARコンテンツの展開も検討しているという。

ARの検証にあたっては、何度も現地に足を運びスマホを使いながら調整が進められたという。PHOTO COURTESY OF BASCULE

絶えざる実験を経てリアルとデジタルが融合する

ひとくちに「アプリ」「ARコンテンツ」といっても、そう簡単に実現するものではない。特に今回の取り組みにおいてはビルや広場のように一般的なARよりも広い範囲を舞台とするものだったため、開発においては多くの困難に直面したと桟は語る。

「ARの開発においてはVPS(Visual Positioning Service/System)と呼ばれる技術を使ってカメラの映像と空間の位置情報を統合する必要があるのですが、今回は小さなモノや部屋の一角ではなく虎ノ門ヒルズステーションタワーの外観をはじめ屋外の広い範囲を使うものだったため、細かな部分まで空間を高い精度でスキャンするのは大変なプロセスでした」

TOKYO NODEが目指すダイナミックデジタルツインを実現するためには、街という広いフィールドを扱わなければならない。加えて、虎ノ門ヒルズステーションタワーならではの環境や空間を活かしたAR表現を生み出すために、ひたすら実験が繰り返されたのだという。ボリュメトリックビデオ撮影によってダンサーを撮影し、各地に赴いて実空間をくまなくスキャンしたうえで、どんな演出を行うとリアルとデジタルが融合するような体験を生み出せるか検証していく。

「もちろん安全面の検証も重要でした。特に地下の駅前広場は多くの人が行き交う場所でもあるので、スマホをかざしながら歩く人が増えると事故につながってしまいますから」とバスキュールのテクニカルディレクター、大澤咲子が語るように、ただ面白いコンテンツをつくるだけではなく現実の空間や条件との整合性をとることもダイナミックデジタルツインのようなビジョンを実現するためには必要不可欠な作業となるのだろう。

開発の過程では、虎ノ門ヒルズステーションタワーでどんな表現を行えるかさまざまな検証が行われた。VIDEO COURTESY OF BASCULE

新たな実験を受け入れるプラットフォームへ

桟によれば、TOKYO NODE Xplorerはあくまでもプラットフォームであり、まだ始まったばかりの存在だという。開業時に発表されるコンテンツのようにTOKYO NODEの展示企画と連動した企画が今後も続いていくのはもちろんのこと、ボリュメトリックビデオ撮影を行うことで、駅前の広場やビルの上といった広大な空間で3D化されたアーティストがARライブを行うことも想定されている。その場に集まった人々がひとつの空間にスマホをかざしながらライブパフォーマンスを体験することができれば、新たなエンターテインメントの風景を立ち上げられるかもしれない。

「バスキュールでは音声ARに関するプロジェクトにも取り組んでいますし、今後はTOKYO NODEだけでなく多くの企業やクリエイターが参加できるようなプラットフォームをつくっていけたらと思っています」

そう大澤が語るように、このアプリはこれまで存在しなかった新たな都市の表現を支えるプラットフォームになっていくかもしれない。たとえばクリエイターからすれば、これまでとは比べ物にならないほど自由な表現を街なかで実験できるようになるだろうし、企業から見れば、街なかのビルの壁面や道路を使いながらサービスやプロダクトのプロモーションを行えるようになる可能性を秘めている。

TOKYO NODE LABは街のステークホルダーを増やすことを目標のひとつに掲げているが、TOKYO NODE Xplorerを通じてプラットフォームが整備されていけば、挑戦の場を求めるクリエイターや企業が自然と集まってくる場所へ虎ノ門が変わっていくかもしれない。TOKYO NODEとTOKYO NODE LAB、そしてTOKYO NODE Xplorer――空間とコミュニティ、そしてデジタルテクノロジー、この3つが密に連携していくことで、今後、虎ノ門には世界に類を見ない表現のプラットフォームが育っていくはずだ。

「App Store」または「Google Play」よりアプリをダウンロード (iOSをご利用の方) https://apps.apple.com/jp/app/id6464024849
 (androidをご利用の方) https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.moribuilding.tokyonode

2023.12.12 緊急時のお知らせ

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