12月から始まるTOKYO NODE開館記念企画第2弾「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」は、蜷川実花史上最大級の展示だ。のべ面積1,500㎡におよぶGALLERY A/B/Cをすべて活用し、10以上のまったく異なる空間がつくられる。しかも単に壁にかけられた写真や投影された映像を観るのではなく、蜷川の作品世界に没入するような体験を生み出すものになるという。
注目すべきは、本展が蜷川実花個人ではなく、クリエイティブチーム「EiM」によるということだろう。10月11日に開催された「TOKYO NODE : OPEN LAB」のセッション「蜷川実花の挑戦 ‐空間に広がり、身体・五感で感じる没入型芸術‐」にも蜷川をはじめとするEiMのメンバーが登壇し、本展がどんな空間をつくろうとしているのか明かされた。


蜷川実花史上最大級!
EiMによる体験型展示「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」始動
PHOTO BY SHINTARO YOSHIMATSU
写真家・映画監督の蜷川実花がデータサイエンティストの宮田裕章らと結成するクリエイティブチーム「EiM」による展示「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」が2023年12月5日から始まる。これまで国内外のさまざまな場所で無数の展示を行ってきた蜷川が今回チャレンジするのは、写真や映像にとどまらない「空間体験型」の展示だという。未知の没入体験を生み出すべく、現在制作が鋭意進行中。EiMは、いかに新たな体験をつくろうとしているのか――去る10月11日にカンファレンス「TOKYO NODE : OPEN LAB」で行われたEiMのセッションを参照しながら、展示の全貌を紹介していく。
個人ではなくチームだから表現できるもの
「これまでも展覧会や映画の制作ではチームを組んでいましたが、基本的には私がやりたいことをみんなにサポートしてもらう体制になっていました。最初の0を1にしていく作業はずっと私ひとりで行っていたのですが、自分だけでなくさまざまな人と関わりながらものをつくることでもっと広い世界が見えてくる気がしたんです。EiMも“私”の作品をつくってもらうチームではなく、“バンド”のようなものだと思っています」
そう蜷川が語るように、EiMには慶応義塾大学教授の宮田裕章や森ビルの桑名功、杉山央といった登壇メンバーをはじめ、さまざまな才能をもった人々が関わっている。宮田はコンセプトの策定から密接に作品制作に携わり、桑名はアイデアを実際の空間に落とし込んでいく立場を、杉山はTOKYO NODEに精通する存在としての役割を担っているという。

10月11日に行われた「TOKYO NODE : OPEN LAB」には、蜷川をはじめ、EiMの中核を担う4名が登壇した。
もっとも、あくまでもEiMの核にあるのは蜷川の世界を切り取るセンスなのだと宮田は語る。チーム名の「EiM」とは本展のタイトルにもある「Eternity in a Moment」の略称であり、蜷川の視点から一瞬の世界を切り取ることが本展のコンセプトにもなっている。
「メンバーはみんな蜷川さんの作品が好きなので、“次”の世界を見たいと思っているんです。だから単に蜷川さんがつくりたいものを実現するのではなく、ときには衝突しながらどんな作品をつくるべきなのか議論を重ねています」
桑名はそう語り、お互いが対等な立場で制作に臨んでいることを明かす。蜷川の作品や創造性がEiMメンバーへと開かれることで、これまでにない「蜷川実花」を見られることになるだろう。
今回の展示ではさまざまな手法や表現を使いながら異なる空間がつくられていくという。
現実世界の美しい瞬間を切り取る
蜷川は、本展に向けて1年以上かけてさまざまな表現にトライしてきたことを明かす。「TOKYO NODEで行う展示は私にとって重要な分岐点となるはずです」と蜷川が語るように、ただこれまでの作品を集めたものではなく、新たな表現へ挑戦する場となるようだ。
たとえば2022年に開催された安比Art Project「胡蝶の旅 Embracing Lights」や今年7月から9月にかけてまえばしガレリアで展示された「残照」といった作品を見れば、蜷川たちが新たな空間づくりやインスタレーションの手法に取り組んできたことがわかるはずだ。
さまざまな形態にトライしながらも、EiMの面々は身近なところから美を見出すことを大切にしてきたと宮田は語る。蜷川実花の作品を象徴する鮮やかで美しい色彩はフィクションの世界から来たものではなく、あくまでも自分たちが生きている世界なのだ、と。

まえばしガレリアの「残照」展示風景。今回も生花や造花を使ったインスタレーションが予定されている。
「蜷川さんの視点から見ると、普段は気にもとめない景色、たとえば雨の日の水たまりに映ったネオンサインもすごく美しく見えてくる。世界が輝いて見えるんですよね。アートの歴史を振り返れば常に新たな視点が導入されることで新たな表現が生まれてきたように、ぼくらも現在と未来をつなぐものとして身近な景色からイメージをつくっていきたいと思っています」
CGや生成AIの発展によってもはや人間は撮影を行わずとも美しいイメージを生み出せるようになりつつあるが、EiMはあくまでも私たちが生きている世界の美しさに目を向ける。宮田が「ほんの少し見方を変えるだけで世界は美しいことに気づかされます。自分が変わることによって世界が変わることを表現できたらと思っています」と語るように、今回行われる展示も現実から隔絶された別世界を提示するものではなく、TOKYO NODEの外側とも地続きなこの世界の美しさを表現するものになるのだろう。

GALLERY Aではドーム状の空間を映像で埋め尽くすようなインスタレーションが展開される予定だ。※画像はイメージです。
異なる時間に異なる表情を見せる多彩な展示空間
蜷川や宮田が語るEiMのビジョンは、具体的にどんな空間へと結実するのだろうか? 桑名によれば、現在10以上の展示室をつくろうとしているという。「1つの展示室だけでも通常の展覧会に匹敵するほど規模が大きく、しかもすべて新作なんです」と桑名は続け、展示室ごとに大きく異なる空間を生み出すことを明かす。
10以上に及ぶ展示室は、大きく3つに分けられる。前半は静かで内省的な展示からスタートし、コロナ禍で世界が揺らいだあとにもう一度命のあり方を見なおすことから体験を紡いでいくという。続く空間では夜が明けさまざまな未来へつながる光を表現し、最後のパートでは広大な空間を使いながらこれまでの時間のなかで紡がれてきた人々の祈りを未来へつなぐような空間表現を生み出そうとしている。

蜷川実花といえば極彩色を想起する人も多いかもしれないが、本展では敬虔な気持ちを呼び起こすような光のインスタレーションも展開される。※画像はイメージです。
本展では蜷川がこれまで扱ってきた花や植物、金魚、都市の色鮮やかなイメージはもちろんのこと、ときにはより抽象的な光のイメージも取り入れながらさまざまな空間がつくられている。生花や大小さまざまなモニターを使ったインスタレーションから映像のプロジェクション、ネオン管を使った光の表現など、イメージの提示方法もさまざまだ。なかには外の光を取り入れることで昼と夜でまったく異なる表情を見せる展示室もある。宮田が「今回多様なメンバーが集ったことで、これまで蜷川さんの作品を観てきた女性の方々はもちろんのこと、多様な世代に届くような作品がつくれたと思います」と語るように、蜷川実花というアーティストのイメージを更新する展示になっていきそうだ。
展示の開始を1カ月後に控え、現在進行形で作品の制作は進行している。展示空間はもちろんのこと、グッズもさまざまなブランドとコラボレーションが控えているという。「1日では観きれないほどのイメージを詰め込んでいますし、来るたびに新たな発見がある展示になると思います」と蜷川は語る。これまで蜷川の作品を追いかけてきた人々だけでなく、新たな空間表現やイメージと現実の関係性を考える上でも、「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」は見逃せない展示になりそうだ。
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