ハードとソフトの連動が重要
「TOKYO NODE : OPEN LAB」は、虎ノ門が新たな都市体験を生み出す実験場となることを謳っている。テクノロジーやシステム、空間などリアルの体験を支えるインフラとなる要素を「ハード(ウェア)」、アートやカルチャー、エンターテインメントなど施設内で展開されるコンテンツや表現を「ソフト(ウェア)」とするならば、TOKYO NODEはその両面においてこれまでにない都市体験を生み出す場と言えるだろう。
TOKYO NODE開業後初となるカンファレンスイベント「TOKYO NODE : OPEN LAB」が10月10日・11日の2日間に渡って行われた。TOKYO NODEに関わるさまざまな企業やクリエイターが集まったこのカンファレンスは、この施設が今後どんな体験を提供するのか、そこにどんな人々が集うのか示すものとなったといえる。計17のセッションを振り返りながら「ハード」と「ソフト」、2つの観点からカンファレンスの模様をお届けしよう。まずはTOKYO NODEの「ハード」がもつ魅力に迫る。
「TOKYO NODE : OPEN LAB」は、虎ノ門が新たな都市体験を生み出す実験場となることを謳っている。テクノロジーやシステム、空間などリアルの体験を支えるインフラとなる要素を「ハード(ウェア)」、アートやカルチャー、エンターテインメントなど施設内で展開されるコンテンツや表現を「ソフト(ウェア)」とするならば、TOKYO NODEはその両面においてこれまでにない都市体験を生み出す場と言えるだろう。
オープニングセッションはTOKYO NODE LABの中核メンバーである森ビルの杉山央、バスキュールの朴正義、日本テレビの加藤友規に加え、OPEN LABのメインビジュアルを作成したアートディレクターの矢後直規も参加した。
TOKYO NODEのハードを考える上で、建築家・重松象平の存在を無視することはできない。同施設を初期構想段階から発案した重松とプロジェクトを主導した森ビルの杉山央による1日目のセッション「都市にシンボルをーTOKYO NODEという結節点」は、この施設が生まれた背景を解き明かすものとなった。
「建築家はハードの設計だけを任される場合が多いのですが、今回は建築と機能やプログラムを同時に提案したいと考えていました」と重松が振り返るように、建築家とともに空間のみならず機能が検討されたことがTOKYO NODEの特徴のひとつだ。大きな窓があり外部とのつながりを見せるギャラリーやホール、クリエイターの創造性を刺激する独創的な展示空間、アイコニックなルーフトップガーデンやインフィニティプールなど、TOKYO NODEの各空間はただの汎用的な“ハコ”ではなく、新たな表現を誘引する魅力に満ちている。
「消費だけでなく発信の場になること、ハードとソフトが連動することが重要ですよね。この周辺には公園もブリッジも広場もありますし、TOKYO NODEが起点となって街全体へ影響が広がっていくことを期待しています」と重松が語るように、ハードそのものがソフトを刺激し街への広がりを促すことがTOKYO NODEの魅力と言えるだろう。
建築家・重松象平は、過去の貴重な提案資料を引用しながら、TOKYO NODEの計画を振り返った。
重松と杉山のセッションが示唆するように、ハードをつくることはゴールではなく、スタートであるはずだ。1日目のセッション「サステナビリティが拡げるイベントの可能性」は、TOKYO NODE LABメンバーの博展から木島大介、白川陽一、鈴木紳介が参加し、森ビルの板橋令子とともにTOKYO NODEがどうやってサステナブルに活動する基盤をつくるのか示すものとなった。
長年にわたってイベントや展示の空間・体験設計を手掛けてきた博展は、近年サステナビリティに注力していることで知られている。実際にTOKYO NODEでも博展は森ビルとともにサステナビリティ・ガイドラインを整備しており、環境へ配慮しながらイベントを行える体制をつくっている。白川によれば、商業施設・展示施設がこうしたガイドラインを自らつくることは非常に稀なことでもあったという。
「ルールを押し付けるのではなく、このガイドラインを見ながら会場と主催者が一緒にサステナビリティを実装したイベントに向けてコミュニケーションできる仕組みを生み出したいと考えたんです」
こうしたガイドラインは一見会場利用のハードルを上げてしまうように思えるかもしれないが、グローバル規模で見ても近年サステナビリティを重視する企業やブランドは非常に多い。TOKYO NODEがサステナビリティを実装していくことで館内のみならず虎ノ門エリアにも影響が広がり、街そのもののイメージも変わっていくだろう。
より深くハードを知っていくためには、TOKYO NODEの内側に目を向ける必要がある。1日目のセッション「ボリュメトリックビデオスタジオから発信する新たな都市体験」は、TOKYO NODE LABがつくるスタジオにフォーカスしたもの。撮影環境を支えるキヤノンの伊達厚とIBMの倉島菜つ美、ボリュメトリックビデオを使うコンテンツ制作に取り組んできた日本テレビの久野崇文、立ち上げから携わってきたバスキュールの朴正義と森ビルの茂谷一輝が参加し、スタジオの可能性を語った。
ボリュメトリックビデオ技術とは、空間を大量のカメラで被写体を360度から撮影し精緻な3次元空間をつくりだし、自由に視点を変えられる映像を生み出すものだ。TOKYO NODEのスタジオはキヤノンが数十台のカメラによって撮影環境を整備し、IBMが膨大な量の映像を処理するサーバー技術を提供している。このスタジオでは撮影したデータを瞬時に処理し、わずか3秒で配信を行えるようになっているという。
「このスタジオは日本で一番小さなボリュメトリックビデオスタジオかもしれませんが、その分誰もが気軽にアイデアを実験できる場所にできたらと思っています。ただの貸しスタジオではなくTOKYO NODE LABが企画の段階からサポートできるので、さまざまな方々が新しい形のエンターテインメントを生み出せる場になると思うんです」
そう朴が語るとおり、多くの企業が参画するTOKYO NODE LABのサポートによってこのスタジオは唯一無二の存在になると言える。なかでも日テレは野球中継をはじめさまざまなシーンでボリュメトリックビデオの活用に取り組んでいるため、TOKYO NODEの中にこのスタジオがあることで今後さまざまな知見が集約されていくことになりそうだ。
平日開催にも関わらず、会場にはさまざまな人々が集まっていた。
このスタジオで撮られた映像は、TOKYO NODEを超えて街に広がるものでもある。同じく1日目に行われたセッション「「Site-specific AR」デジタルツインを活用した都市の体験拡張」は、バスキュールの桟義雄とシンメトリーの沼倉正吾、森ビルの茂谷が集まり、TOKYO NODEと虎ノ門の街をつなぐ実験が紹介された。
バスキュールは虎ノ門エリアやTOKYO NODEを舞台にしたARアプリ「TOKYO NODE Explorer」を開発し、シンメトリーも虎ノ門エリアをデジタルツイン化するARコンテンツの開発とベースのシステム開発・運用を担っている。以前からARコンテンツの企画や開発に携わってきた両社によって、虎ノ門というロケーションに特化した「Site-specific AR」が実現する予定だ。
茂谷が「虎ノ門ヒルズや新虎通りを実験の場として新しい都市体験をつくっていきます」と語るように、すでに両社を中心とした体験づくりも進行中だ。たとえばバスキュールが手掛けるアプリはTOKYO NODEでRhizomatiks×ELEVENPLAYが企画したパフォーマンスプログラム「Syn : 身体感覚の新たな地平」と連動したARコンテンツを展開しており、シンメトリーは国土交通省の都市デジタルツイン実装プロジェクト「PLATEAU」とともにXRアプリを開発するプログラム「TOKYO NODE XR HACKATHON」を立ち上げている。
両社が手掛けるアプリやデジタルツインは新たな表現のインフラとなって、デジタル空間と虎ノ門をつないでいくことになるのかもしれない。
こうしたリアルとデジタルの融合は、TOKYO NODEを考える上で重要なテーマのひとつだろう。今回も1日目にはIMAGICA EEXの諸石治之とNTTの島村潤による「リアルとサイバーが融合した新たな体験創出」、2日目にはKDDIの水田修とバスキュールの朴、森ビルの杉山央が議論する「情報発信拠点「TOKYO NODE」に必要なテクノロジーとアイデアとは?」など、いくつものセッションが行われた。
前者はTOKYO NODE LABメンバーでもあるIMAGICA EEXが、新たなテクノロジーのR&Dという観点からNTTの人間情報研究所とコラボレーションを進めていることを紹介した。諸石はIMAGICA EEXが空間のデータ解析を行ってリアルタイムに映像を描画する技術を開発するだけでなく、NTTとともにリアルな空間をまるごとデジタル化するプロジェクトに取り組んでいることを明かす。
すでにNTTは瀬戸内海の男木島をフィールドとして5ミリピッチという高精度な空間のスキャンを行うことでメタバース空間をつくりだしており、島外の人でもリアルに島の様子を体験できることで男木島の関係人口を増やそうとしている。さらには視覚的な空間情報のみならず、360度の立体音響や振動情報の再現などNTTが有するテクノロジーを活用し五感へアプローチする体験をつくってるという。IMAGICA EEXやNTTをハブとして、今後もデジタルとリアルを融合させるさまざまな技術がTOKYO NODEへと実装されていきそうだ。
会場のTOKYO NODE HALLは、ステージの背後に東京の景色が広がっている。
後者のセッションは、同じくラボメンバーのKDDIがメタバース・Web3サービスプラットフォーム「αU」を通じて都市を変えていく可能性を明らかにした。水田や朴はコロナ禍がひとつのきっかけとなり、渋谷をバーチャル空間化するプロジェクトや嵐による史上最大規模のオンライン配信ライブなど、オンライン上の体験価値が再注目されたことを振り返る。
こうしたプロジェクトと比べると、TOKYO NODEのホールは収容人数だけ見れば338席と決して規模こそ大きくない。しかしその空間がボリュメトリックビデオやARなどデジタル技術を組み合わさることで、無限の広がりを見せるはずだとふたりは語る。デジタルテクノロジーによってクリエイターのパフォーマンスやイベントがアーカイブされることで、従来のイベント会場とは異なる収益モデルも生み出せるかもしれない。
「デジタルの体験はハードに蓄積していくことでより効率的に展開していくはずです。新しいことに挑戦したい人を迎えられる場所へTOKYO NODEを育てていきたいですね」と言って水田がセッションを締めくくったように、デジタルとリアルをつなぐことで生まれる相乗効果こそが、TOKYO NODEを唯一無二の場へと成長させていくはずだ。
建築から館内空間、さらにはボリュメトリックビデオスタジオからARやデジタルツインのプラットフォームまで――OPEN LABのセッションは、TOKYO NODEという「ハード」がどのようにデジタルとリアルの、あるいは世界と虎ノ門の結節点となって新たな都市体験へつながっていくのか明らかにしたといえるだろう。
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